ちょっと

2005年7月発行海月通信第34号掲載

 少しの事、少しの量、少しの差、少しひかえめと云ったような事はちょっとだけの事と思って人は気にとめないが、しかし実は一番気にとめている事である。

 このような微妙なあり方に対しては誰もが忘れてしまうと思っているが違いというのは、そのへんのちょっとというのが一番きつくて、そのちょっとの所に神経がどんどん集まっているのだと思う。白の汚れが気になるのはあるかないか、ギリギリのところでほこりであるとか毛であるとか、かすれたような汚れといったものは、はっきりと鉛筆で書いたものよりも神経につきささってくるのである。同じ長さの棒が30本ほどあるのにその中で一本ちょっと長いとそこにばかり神経がいってペーパーでこするかして取り去ったりしてやっと気が落ち着くといった様な事がある。

 あるかないかぎりぎりの所を超えたというのをちょっとというのだろう。ちょっととは精神の意識のあり方ではないだろうか。1996年7月17日 MEMOより

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