2005年9月発行海月通信第35号掲載

勇気というのはそんなにむつかしい事でなく、日々の生活の中の一つを変えるというのも勇気ではないかと思う。
例えば毎日通っている道を変える事も新しいものを見る事も飯を抜く事も、考えてみるとそんな単純な事を人は勇気とは云わないが、勇気というのは次限を高くしている状態と決めかかっているが、そんなものではない。毎日している中でちょっと変化するというのが大変な事なのである。そのちょっとが何かいっぺんにすることよりも重大な意味を持っているのである。
毎日朝挨拶をしなかった人がある日突然「お早うございます」と云う事から今まで何もなかった関わりが一寸ずつ繋がり挨拶の声が大きくなり、その人のプライベートな悩みや楽しみ、「力」、思いもかけない技術や才能と出会うといった展開になる時、最初お早うという簡単な出来事が発端であるというのは大変勇気な出来事である。
絵でも今まで使わなかった色を使うという事で絵の響きが変化して自分のイメージや形、描く対象物等々に影響してくる。そうした小さい小さい事をやるというのは大変な勇気につながっている。1996年3月23日 MEMOより