2018年11月発行海月通信第114号掲載

今から3年程前に、神戸の三宮の山手になる加納町あたりに、中国料理の店があり、友達がおいしい店があると言うので行って、何度か行く内に、だんだんとお客が増えてきて、夕方など、よっぽど早くいかんと入れない事が度々であったが、どんな理由だかわからんうちにその店の料理人兼支配人ごと居なくなり、店はそのまま継続していたが、行く度に人が減って半年も経たないうちにお客が居なくなった。もちろん三宮の中心街からも遠いので、味がダメになったので誰も寄り付かなくなってしまった。僕もそんなことで一度誰も居ない時に入って食べたがダメだった。
その後そのままに記憶から遠のいていたが、この度、昔達が丹波篠山で「まちなみアートフェスティバル2018」と云うのがあり、その展に沢山出品している事もあり出かけた。その内の一人にNさんと云う作家が出品。Nさんと色々話をして、昼になったので何処かで昼メシを食べようと言う事になった。Nさんがこの近所に美味しい店があると言うので、ついて行くと、町屋筋から少し離れた、静かな小高い山の裾野に隠れるように出来たにわか作りの店に入った、昼時でしばらくN君と外で待たされた。こんな田舎の場末の店で待たされるなんてと思った。二人で昔の友達やアートフェスティバルの話をしていた。呼ばれて中に入ると満員であるが、店の隅の角にやっと座って、ふとその席からコックの親方の顔を見ると、三宮のあの親方ではないか! 年は45・6才位かと思う。気になりながらお店のお勧め「竹海(ズーハイ)」中国庶民料理の定番と言う事で食べると、3年前の全く同じ味であった。この時、味も芸術と言うか成程と思った。旨いものは誰でも分かるという事を実感。
そんな事で、N君と店を出て、ちょっと店の前から坂になっているので、たったっと坂を走り降りた瞬間、あのあんちゃんの名前と僕の記憶を確かめる為にN君に「俺、今のコックのあんちゃんの事確認して来る」と言って、料理中のあんちゃんに挨拶しに行った。すると、「私もアンタの顔を覚えている」と言ってくれた。何か嬉しい広がりを感じた。
2018年9月15日 丹波篠山・まちなみアートフェスティバル
