御褒美の条件

2017年11月発行海月通信第108号掲載

 この間2017年9月に新長田の野瀬病院という場所で、どこでもアートクラブという寄合で毎回デーマを設けていて、そのテーマが、今回「御褒美」と云うのであり、その時たまたま柳田国男の「遠野物語」を読んで、その続きで「日本の昔話」を読んでいた。

 その中で必ず善人と悪人が出てきて、善人が御褒美をもらうという、「めでたしめでたし」と云う事が物語の一つのパターンになっているのですがその構図のバックボーンにある褒美の条件。貧乏。正直。無学。無欲。親切。忍耐。公平。信じる。喜び。自由。・・・とあることで何か心がほっこりとするのです。この遠野時代は、灯(電気)今のような文化生活のまったくない、家の中に囲炉裏があり、夜になると囲炉裏の場所以外は漆黒の闇に包まれた世界が続く。一年の半分の時間が闇の中での生活。それに四季。秋から冬にかけては夜が永く、それぞれに淋しい孤独の中に追いやられていく。そこで囲炉裏の場で、数知れず、「昔々あるところに・・・」と云う話が遠野村では続いた。これらは代々の親から子と続いてそこに諸々の人間模様と自然(野生の猿、きつね、たぬき、ヘビ、キジ、カラス、馬、ねずみ、等々)これらの生きものが夫々に想像によって物語が創られていった。これは囲炉裏文化と日本の四季とがハモリながら、夫々の人の心に刻み込まれた時代の産物である。この文化は遠野村の囲炉裏が消える事で、その時代の空気はどこかへ行ってしまった。

 時代と云うのはそのように時間の中で、変化し続けていることが面白くて、今の時間もよく観察すると、その今だけという事がありありとあって面白い。海月文庫の一年のテーマ。四回シリーズも、この遠野物語と同じようにオモシロイドラマを創っているのだと、思ったりしています。   2017年10月2日 堀尾貞治

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