2006年11月発行海月通信第42号掲載

美術を考えてみると、ことさらものを作るとか、絵を描くとかいっても、なんのくその役にもたたないものであるから、やらないというのが正常な気がしてくる。
普通の生活をして絵が必要なのか考えてみると、アホみたいなことに思えてくる。現実に今日食べるものや、今これをやらないと生きていけないという時に、美術なるものが必要ではないのは、あたりまえのことである。それでもこの美術をやるというのは、心のゆとりがあるから出来ることで、その心の中にいやなことやわずらわしいことがいっぱいになると、心のゆとりは そこから出ていかんといけない。
美術とはゆとりというところに生まれてくるものであるが、反対に何もないゆとりのないところからも逆に反対の時間のない、ということでよけいに恋のような美術のあり方が生まれて来るのかも知れない。美術とはやはりその人の問題のようだ。1996年3月8日 MEMOより