描いたら終わり

2008年7月発行海月通信第52号掲載

 絵を描き終わったので、この絵は終わり。と云うふうに、自分がしたことは終わったと考えがちである。絵にかかわらず、話でも彫刻でも、歌でも、書でもありとありとあらゆるものは、すべてその人の体験を通して又そこから始まるのである。普通にはコンクールに出品したので、この絵は終わっていると云うふうに思ってしまっているが、ここから自分の絵を学ぶのである。この繰り返しの中で自分の絵を発見していくのである。

 若い頃は自分の考えている事と形にする事が合わなくて、いつの場合も考えの方が上で、手で形にするものが、、いつの場合もみじめなものであった。やっと50才を過ぎた頃から、考えと手とがあいだしてきたように思う。考えと手との差はなかなか埋まらんものと思っていたが、今57才になって思う事は、作られた形やこうあらねばという概念をベースにしていたので、それをめんでみると手でつくられたものを考えが追ってゆくやり方に変わっている。どんどんとやる行為そのものを考えで新しく追い、考えで出したものを、さらに手で追ってゆく。と云うやり方で絵が生まれてきている。

 考えてみると自分の描いたものから学び、又それを形にすると云うやり方が、考えなくても交互に繰り返されている事を実感する。1995年6月30日 MEMOより

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