2010年1月発行海月通信第61号掲載

1996年6月15日(土)NHKの朝のテレビで高山辰夫という日本画の作家が紹介されていて見ていた。正直あまり日本画の作家の仕事を僕は認めていなくて、瞬間にチャンネルを切るのが、今までの自分だったが、その朝は他に見るものもないのでぼんやりと見ていた。僕の場合は抽象思考が強いので、あまり自然の風景を観察したりするような事をしないが、作家はいつも自然を観察しているという話であった。
その話の中で眼で見て記憶していても、その風景や物を手で描かないと本当に記憶した事にはならない。なにも眼だけが物を見てるから記憶出来るものでなく、手も足身体全体が眼であるといった事を言っていて面白いと思った。
我々の記憶はいつの場合も単純に眼はものを見る、手はものを捕まえる足は歩くと云ったように別々にその役割を決め付けているが、眼だけでなく同時に手も足も身体全体で見ていると云う一言で、見ると云う意識の領域がふわっと広がって、もうけたと云う気持ちになった。1996年6月17日 MEMOより